かつては不治の病であり死の病と恐れられた結核。薬のない時代は「空気のきれいなところで、栄養のある食事をとり、安静を守るという方法」で治療を行うため各地にサナトリウムが設立されました。
1876(明治9)年に東京医学校(現東京大学医学部)の教師として招かれたドイツ人医師、エルウィン・ベルツは、結核療養の理想の地を湘南地方に求め、鎌倉海濱院、杏雲堂平塚分院などが設立され、最も多い時には湘南地区に12のサナトリウムがありました。
旧南湖院(なんこいん)は1899(明治32)年に医師高田畊安により設立された結核患者のためのサナトリウムで、昭和初期には敷地面積5万坪、1日の平均入院患者数200人といった規模を誇り、当時東洋一といわれました。
開設者の高田畊安の死後はその使命を終え、米軍による接収・返還などを経て、現在は高田畊安の思想を受け継いだ老人ホーム「太陽の郷」が運営されています。
この記事の目次
旧南湖院第一病舎とは
旧南湖院第一病舎は、旧南湖院に12あった病舎のうち最初に建てられたもので、畊安の母の名前を取って「竹子室」と名づけられました。
2015(平成27)年には第一病舎とその土地が茅ヶ崎市に寄贈され、太陽の郷の敷地の北側部分は「南湖院記念 太陽の郷庭園」として一般公開されています。また、この病舎は2018(平成30)年に国の登録有形文化財に登録されています
南湖院記念 太陽の郷庭園を歩いてみよう
受付ハウスから旧院長室棟へ
庭園入り口の門から庭園内に入ったら、まずは受付ハウスに立ち寄り用紙に入園時間を記入します。案内のチラシには番号札を受け取るということが書いてありますが、私が訪問した時には番号札はありませんでした。
左の方に進むと第一病舎が見えます。そしてその先には富士山の姿もうっすらと見えています。
目の前には緩やかな起伏があり、富士見台と呼ばれています。ここから第一病舎越しの富士山の眺めは大変美しく、関東の富士見百景に指定されています。
関東の富士見百景については下記リンクを参照してください。
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暫く歩き進むと太陽の郷の施設の入り口となります。ここには大楠がそびえ立ち、その周りを回るロータリーの役目を果たしています。施設の入り口の反対側には旧院長室棟があります。
老人ホームの施設は私有地であり立入禁止ですのでご注意ください。
庭園に降りて旧南湖院第一病舎へ
ロータリーの一角から幅の狭い階段を降りて広大な庭園に進みます。まずは梅林に行ってみましょう。
梅林には大きなウメの木が2本ありました。その根元にはヒガンバナが咲き、太陽の光に輝いています。
手入れの行き届いた庭園の歩道を歩きます。
正面には第一病舎が見えています。左手にひょうたん池を見ながら進んだ先には、旧南湖院の開設者、高田畊安の碑があります。
高田畊安については、茅ヶ崎ゆかりの人物で詳しく展示される場合があります(展示替えもありえます)。茅ヶ崎ゆかりの人物館については下記リンクを参照してください。
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旧南湖院第一病舎
第一病舎の周りをひと回りします。内部の見学は出来ません。
第一病舎から丸池、藤棚を経由して受付ハウスに立ち寄り帰路につきます。
旧南湖院第一病舎のまとめ
- 旧南湖院第一病舎はかつで東洋一とうたわれたサナトリウム「南湖院」の最初に建てられた病舎
- 現在は建物と敷地が茅ヶ崎市に寄贈され、南湖院記念太陽の郷庭園として一般公開
- 建物は登録有形文化財に登録され、また、ここから見る富士山は美しく関東の富士見百景に指定
いかがでしたでしょうか。旧南湖院第一病舎の概要についてひととおりまとめましたが、もしも気になるようでしたらお出掛けされてはいかがでしょうか。
「青鞜社」を設立し、大正から昭和にかけて女性の権利獲得に奔走した活動家、平塚らいてうの姉、孝も、南湖院で療養生活を送りました。平塚らいてうについては下記リンクを参照してください。
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交通アクセス
↓茅ヶ崎市公式サイトから引用↓
所在地 | 茅ヶ崎市南湖7丁目12869番地 |
バス | JR東海道線「茅ヶ崎駅」南口よりバス(1番のりば)「仲町」下車 徒歩約7分 |
開園日時 | 月・木・金・土・日(年末年始を除く) 4月~10月:10:00-17:00 11月~3月:10:00-16:30 (入園は閉園の30分前まで) |
問合せ先 | 茅ヶ崎市文化生涯学習課 TEL:0466-82-1111(代表) |
公式サイト | 南湖院記念太陽の郷庭園(茅ヶ崎市公式サイト) |
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更新状況
- 2021年10月10日:記事掲載
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