北鎌倉にある浄智寺は鎌倉五山第四位の格式高い寺院。境内は静かで季節毎に美しい花が咲き、七福神の布袋尊も祭られている見どころの多い寺院です。
更新状況
- 2024年8月23日:アジサイと苔庭の石像の写真を追加
- 2024年6月30日:布袋尊近影2枚とアジサイの写真2枚を追加
- 2023年12月24日:写真を8枚追加(秋の風景、観音像2枚、茶室、寺務所、アジサイ、シュウメイギクほか)
- 2021年9月15日:記事掲載
この記事の目次
浄智寺とは
浄智寺は、JR横須賀線、北鎌倉駅から徒歩およそ8分、鎌倉市山ノ内にある臨済宗円覚寺派の寺院です。山号は金寶山、鎌倉五山第四位の格式高いお寺です。
鎌倉幕府第5代執権北条時頼の三男である北条宗政が亡くなった折、その菩提を弔うため、1281年頃10代執権北条師時(もろとき)らが創建しました。
開山に招かれたのは南洲宏海(なんしゅうこうかい)でしたが、師の大休正念(だいきゅうしょうねん)と兀菴普寧(ごったんふねい)に譲ったため、開山には3人の名が連ねられています。
映画監督の小津安二郎(おづやすじろう)や、女性として3人目の文化勲章を受け鎌倉市名誉市民にもなっている日本画家、小倉遊亀(おぐらゆき)も浄智寺の境内に居を構えました。
鎌倉五山とは
鎌倉五山は、中国南宋の制度に倣った禅宗寺院の格付けを表したもの。鎌倉では北条氏が取り入れ、室町時代に入り足利義満が建長寺、円覚寺、壽福寺、浄智寺、浄妙寺の順に定めました。
浄智寺は、鎌倉五山のほか、鎌倉江の島七福神、鎌倉十三佛、鎌倉三十三観音(31番札所)、鎌倉二十四地蔵(12番札所:聖比丘地蔵)、鎌倉五名水、鎌倉十井などの鎌倉霊場、鎌倉名所巡りの対象地にもなっています。
鎌倉二十四地蔵の対象となっている、国指定重要文化財の木造地蔵菩薩坐像(聖比丘地蔵(ひじりびくじぞう))は、鶴岡八幡宮境内にある鎌倉国宝館に寄託されているため、浄智寺で見ることはできません。
浄智寺を散策しよう
境内案内図:浄智寺公式サイトから引用 鎌倉ボンズくん マップイラスト @Kaori Ohishi
山門から鐘楼門へ
北鎌倉駅から徒歩およそ8分、バス通りにある丸型郵便ポストを右に曲がると、浄智寺の入り口となります。
浄智寺の敷地に足を踏み入れると苔むした石の反り橋があります。わずにかに湾曲したこの橋は一面コケに覆われ竹棒の結界が張られているため、右側の通路を歩いて先に進みます。
山門手前左手には、鎌倉十井(じっせい)のひとつ、甘露ノ井があります。この井戸の水は蜜のように甘く、不老不死の効能があるといわれたことからこの名がついたとされています。
山門には、無学祖元の筆とされる『寶所在近(ほうしょざいきん)』の文字が掲げられ、その先には鐘楼門に続く石段があります。
石段脇には、春にはシャガの花が咲き、鎌倉らしいたたずまいを見せています。
拝観受付で拝観料を支払い鐘楼門に進みます。
鐘楼門は、鎌倉では珍しい唐様の門で、2階部分には花頭窓とよばれる花形の窓がありこの寺独自の景観を見せています。
内部には1649年に鋳造された銅製の鐘が掛かっていて、屋根の下には「山居幽勝」の扁額が掲げられています。
浄智寺の名木の数々
鐘楼門をくぐって境内を散策する前に、浄智寺にある名木について書いておきます。木の名前と場所は以下に記載したとおりですので、散策の際の参考にしてください。
- ビャクシン 本堂曇華殿(どんげでん)の前 鎌倉市天然記念物
- ハクウンボク 本堂曇華殿の奥左手 球体モニュメントの左側 かまくらと三浦半島の古木・名木50選
- コウヤマキ 本堂曇華殿から散策路を進んで左側 鎌倉市天然記念物
- タチヒガン 拝観受付後ろ側 かながわの名木100選
本堂 曇華殿から境内散策
鐘楼門をくぐると右手に浄智寺の本堂(仏殿)である曇華殿(どんげでん)があります。3千年に1度、仏の出現した時だけに咲くという伝説の花「優曇華」にちなむもので、大変貴重であるという意味があります。
曇華殿内にはご本尊の木造三世仏坐像が安置されています。向かって左から阿弥陀如来、釈迦如来、弥勒如来の各如来で、それぞれ過去・現在・未来を表しています。
コウヤマキの木の根元付近には石造りの子安観音があります。キリスト教のマリア像のようにも見えます。
書院の庭から井戸へ
茅葺屋根が一段と美しい書院も浄智寺の見どころのひとつ。手前の庭は見事な苔の庭になっていて、アジサイやヒガンバナなど、季節に応じた花が咲きます。
書院脇の散策路左手の土手にも、季節に応じていろいろな花が咲きます。
間もなく井戸が現れます。この井戸からは門前にあった甘露ノ井と同じ水が出るそうですが、飲み水としては適していません。
この付近は竹林があり、土手の壁面には「やぐら」があります。
井戸のある所から左に進むと、突き当りには横井戸があります。「30数年前まではコウモリの棲み家だった」などと看板に書かれていますが、内部はどうなっているのでしょうか。
また、初夏ともなればこの付近の岩肌は一面ケイワタバコの花でいっぱいになります。
布袋尊像がある墓地に続く崖の洞窟にも観音像があります。
お腹をさすれば元気が出るかも 布袋尊
横井戸から来た道を戻り井戸や竹林を過ぎて左手のトンネルをくぐると、墓地の先に布袋尊の像があります。
この布袋尊は鎌倉江の島七福神のひとつとなっていて、愛嬌のある笑顔がとても印象的です。どうしてもお腹をさすりたくなってしまいますが、もしかするとお腹をさすれば元気がもらえるかもしれません。
布袋尊から茶室(非公開)の脇を通ると、先ほど苔庭から見た書院の前に出ます。ご朱印受付やお手洗いはこちらの書院でということになります。
茶室の近くには、2023年の「世界竹の日」に開催された際に展示された竹アートが残されていました。
小さな門を出て振り返ると、背後には浄智寺の森がみえています。間もなく来るときに通った拝観受付となるので、この近くの木戸を開けて境内の外に出るとハイキングコースに続く道になります。
浄智寺の花
春 シャガ
夏 アジサイ、ユキノシタ
秋 ヒガンバナ、アジサイ、シュウメイギク
ご朱印
ご朱印は、ご本尊、観世音菩薩、十三仏、地蔵尊、七福神の5種類があります。
鎌倉観光文化検定対策
鎌倉観光文化検定公式サイトに過去問の記載がある第11回(2017年度実施)以降の鎌倉観光文化検定(以下、「鎌倉検定」)2級および3級の出題の中から、浄智寺について、出題状況や傾向を検討します。※問題文は一部改変している場合があります。
2020年度・2021年度の鎌倉検定は中止となっていますのでご留意ください。
傾向と対策
出題傾向としては、浄智寺に咲く花(シャガ・ケイワタバコ)に関連するもの、浄智寺に縁のある文化人(小倉遊亀・小津安二郎)を問うものや、鎌倉江の島七福神や浄智寺の開山に関連するものなどがあります。
- 浄智寺参道の石段脇などに群生し、4月下旬から5月上旬に白っぽい紫の花を咲かせ、古都鎌倉らしいたたずまいを演出する花は何か(第11回・3級)⇒正答:シャガ
- 紫色で星形の小花をつけ東慶寺や浄智寺の墓地入口周辺の岩崖に群生しているかれんな花は何か(第11回・2級)⇒正答:ケイワタバコ
- 北鎌倉の浄智寺境内に住み、女性として初めて鎌倉の名誉市民なった人物はだれか(第13回・3級)⇒正答:小倉遊亀
- 『東京物語』など多くの名作を生んだ映画監督小津安二郎が亡くなるまでの約10年間鎌倉で居を構えたのはどこの寺社の近くか(第12回・2級)⇒正答:浄智寺
- 鎌倉七福神のうち浄智寺に祭られているものは何か(第13回・3級)⇒正答:布袋尊
- 境内に鎌倉一の大きさを誇るコウヤマキやハクウンボク,市指定天然記念物のビャクシンやタチヒガンがある寺院はどこか(第16回・3級)⇒正答:浄智寺
- 笑門来福、夫婦円満、子宝の神として信仰が厚い〔 〕は、〔 〕に祭られている。その腹を撫でると病が癒され、健康にも恵まれるといわれる(第11回・2級)⇒正答:布袋尊、浄智寺
- 開山として南洲宏海、大休正念、兀菴普寧の三人が名を連ねる寺はどこか(第11回・2級)⇒正答:浄智寺
鎌倉に縁のある女性有名人の名前を問う問題が第13回の3級に出題されています。この時の正答である小倉遊亀以外の選択肢は、永井路子、吉屋信子、田中絹代となっています。この3人の特徴は次のとおりです。
- 永井路子:小説家。大河ドラマ「草燃える」の原作のひとつ「炎環」で直木賞受賞。1998年(平成10)年に鎌倉市名誉市民になった。
- 吉屋信子:小説家。「良人(おっと)の貞操」で人気作家に。作品に「徳川の夫人たち」「鬼火」など。1962(昭和37)年から没年まで長谷の屋敷に住んだ(吉屋信子記念館)。
- 田中絹代:俳優。1924(大正13)年松竹に入社。「愛染かつら」の大ヒットで人気に。「伊豆の踊子」「楢山節考」など多数出演。鎌倉山に住む。
浄智寺のまとめ
- 浄智寺は、北鎌倉駅近くにある臨済宗の寺院。鎌倉五山の第四位
- シャガやケイワタバコなどの季節の花や鎌倉十井の甘露ノ井、唐風の鐘楼門など見どころたくさん。
- 本堂(仏殿)である曇華殿には現在・過去・未来を表す阿弥陀・釈迦・弥勒の各如来が安置
- 鎌倉江の島七福神の布袋尊は、ユーモラスな表情で人気
- 日本遺産「いざ、鎌倉~歴史と文化が描くモザイク画のまちへ~」の構成資産
いかがでしたでしょうか。浄智寺の概要についてひととおりまとめましたが、皆さんも布袋尊のお腹をさすって元気をもらいに浄智寺にお出掛けされてはいかがでしょうか。
交通アクセス
北鎌倉駅から徒歩およそ8分
連絡先 | 金寶山浄智寺 鎌倉市山ノ内1402 TEL:0467-22-3943 |
公式サイト | 金寶山浄智寺公式サイト |
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参考文献
- 金寶山浄智寺公式サイト
- 鎌倉観光文化検定公式テキスト
- 鎌倉観光文化検定公式サイト(鎌倉商工会議所)
- 深く歩く 鎌倉史跡散策 神谷道倫著 かまくら春秋社