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鎌倉を代表する別荘建築 ~鎌倉文学館~

鎌倉文学館は、鎌倉市長谷の長楽寺谷(ちょうらくじがやつ)と呼ばれる谷戸(やと)にある、鎌倉に関連する文学についての博物館です。この建物は、旧前田侯爵家の鎌倉別邸だったものを鎌倉市が寄贈を受け、鎌倉文学館として整備しました。

三島由紀夫の遺作となった小説「豊饒の海」の第1巻「春の海」に描かれる別荘は、この鎌倉別邸をモデルにしており、今回はこの小説も取り入れて記載しています。

更新状況

  • 2022年5月29日:記事掲載

鎌倉文学館は改修工事のため2023年(令和5年)3月27日から4年間休館となります。

鎌倉文学館とは

鎌倉文学館

鎌倉文学館

鎌倉文学館は、1936年(昭和11年)に旧加賀藩前田家16代当主、前田利為(としなり)により建築された、鎌倉の別荘建築を代表する建物です。

鎌倉文学館のあるこの場所は、長楽寺谷(ちょうらくじがやつ)と呼ばれる谷戸となっています。

長楽寺は、1225年(嘉禄元年)、北条政子が源頼朝の菩提を弔うために建立した寺で、七堂伽藍を備えた大寺院であったといいます。しかし、1333年(元弘3年)5月、北条氏滅亡の際に兵火にかかり、焼失し以後廃寺となりました。

加賀百万石の藩主、旧前田家第15代当主の前田利嗣が、1890年(明治23年)頃に土地を手に入れ、和風建築の館を建て、その館は「聴涛山荘(ちょうとうさんそう)」と名づけられました。

管理人 sho
涛(なみ)を聴くことから聴涛山荘と名づけられました。

この和風建築の館は火災のために焼失し、洋風に再建されました。しかし、この建物も大正関東地震(関東大震災)で倒壊したため、のちほどさらに再建されました。

新しい別荘は、この場所に長楽寺があったことから「長楽山荘」と名づけられ、さらに、第16代当主の前田利為が改築し、現在に残る洋館が完成しました。

この日本の終南別業は、一万坪にあまる一つの谷(やつ)をそっくり占めていた。先代が建てた茅葺きの家は数年前に焼亡し、現侯爵はただちにそのあとへ和洋折衷の、十二の客室のある邸を建て、テラスから南へひらく庭全体を西洋風の庭園に改めた。 三島由紀夫「春の雪」

鎌倉文学館

鎌倉文学館

この洋館は、ノーベル平和賞を受賞した元内閣総理大臣佐藤栄作が別荘として利用していたこともあります。1983年(昭和58年)に前田家から鎌倉市に寄贈され、1985年(昭和60年)に鎌倉文学館として公開されています。

鎌倉文学館の概要

鎌倉文学館の概要を以下の表にまとめました。

住所 鎌倉市長谷1-5-3
電話番号 0467-23-3911
営業時間 9:00~16:30(最終入館16:00)10月~2月
9:00~17:00(最終入館16:30)3月~9月
休館日 ・月曜日(祝日の場合は開館)
・年末年始(12月29日~1月3日)
・展示替期間、特別整理期間など
・5・6月・10・11月は臨時開館あり
アクセス 江ノ電「由比ヶ浜駅」下車 徒歩7分
バス停「海岸通り」下車、徒歩3分
入館料 展覧会によって変動します。 公式サイト等でご確認ください。
カード・電子マネー 各種カード、交通系ICカード利用可
公式サイト 鎌倉文学館

公式サイトには「駐車設備がありませんので、公共交通機関をご利用ください。」との記載があります。

大仏のある高徳院や長谷寺と併せて訪問するのもよいでしょう。

鎌倉文学館に行ってみよう

起点は江ノ電由比ヶ浜駅

江ノ電由比ヶ浜駅

江ノ電由比ヶ浜駅

公式サイトの案内にもあるとおり、鎌倉文学館の最寄駅は江ノ電由比ヶ浜駅であり、ここから鎌倉文学館へは徒歩およそ7分程度となります。

とはいえ、鎌倉文学館のある長谷地区には、鎌倉大仏のある高徳院や長谷観音で親しまれている長谷寺など、見どころがたくさんあります。

こうしたところに出掛けた後に(あるいは出掛ける前に)鎌倉文学館に立ち寄るのが長谷地区散策としては一般的ではないでしょうか。

鎌倉文学館入り口

鎌倉文学館入り口

鎌倉文学館に続く道

鎌倉文学館に続く道

由比ヶ浜大通りを渡って住宅街を暫く歩くと、鎌倉文学館へ続く緩やかな坂道となります。この坂道は先ほどまでの住宅街とは打って変わってうっそうとした樹木が両側から坂道を覆い、辺りは昼でもやや暗くなっています。

長楽寺跡

長楽寺案内板

長楽寺案内板

長楽寺跡の石碑

長楽寺跡の石碑

やがて入館受付があるので入館料を払って中に入ります。入館受付付近には、右手に長楽寺旧跡の石碑、左手自転車置き場付近には長楽寺に関する案内板があります。

~鎌倉の旧地名~長楽寺

長楽寺は旧鎌倉町長谷の字名の一つです。当地に所在した長楽寺が地名の由来とされています。長楽寺は法然上人の弟子隆寛(りゅうかん)あるいは律宗の憲静(けんじょう)の創建といわれ、鎌倉幕府の四代執権北条経時(つねとき)の墓があったとされます。~現地案内板から抜粋~

石畳の道を進むと、その先には木々に覆われた洞門「招鶴洞」があります。ここをくぐり抜けて木立の中を進みます。

「招鶴洞」の名は源頼朝が鶴を放ったという故事から名づけられました。

鎌倉文学館:招鶴洞

鎌倉文学館:招鶴洞

鎌倉文学館の建物とは

招鶴洞をくぐって暫く歩くと、やがて鎌倉文学館の入り口となります。建物には正面向かって右側の車寄せのある玄関から入ります。

管理人 sho
鎌倉文学館では、建物保護のために玄関で靴を脱ぎ、スリッパに履き替えます。
館内は著作権保護の関係から撮影は禁止されているね!
こん吉
鎌倉文学館:建物入り口手前

鎌倉文学館:建物入り口手前

鎌倉文学館:建物入り口

鎌倉文学館:建物入り口

青葉に包まれた迂路(うろ)を登りつくしたところに、別荘の大きな石組の門があらわれる。王摩詰(おうまきつ)の詩の題をとって号した「終南別業」という字が門柱に刻まれている。-三島由紀夫「春の海」-

終南別業は三島由紀夫の創作で、実際には「長楽山荘」の文字が標札に刻まれています。

***

鎌倉文学館の建物である旧前田侯爵別邸は、近代の鎌倉に建てられた別荘建築でも最大級の建物で、国の登録有形文化財に指定されており貴重な建物遺産となっています。

ハーフティンバーなどの洋風のデザインを導入している一方で、切妻屋根などの和風のデザインも見られ、独特の外観となっています。

ハーフティンバー

木造建築の一様式。北部ヨーロッパの木造建築に多く見られる。外壁に骨組みが露出しているのが特徴。
鎌倉文学館:建物外観

鎌倉文学館:建物外観

鎌倉文学館:建物外観

鎌倉文学館:建物外観

館内では鎌倉ゆかりの文学をテーマに、様々な文学者の作品や資料が展示・紹介されています。

鎌倉文学館バラ園

鎌倉文学館:バラの花

鎌倉文学館:バラの花

鎌倉文学館南側斜面の下には、面積およそ600平方キロメートルにもなるバラ園があります。このバラ園には200種250株ものバラが植えられています

そのバラの中には、「鎌倉」「静の舞」「流鏑馬」「星月夜」など、鎌倉にゆかりの名が付けられたものもあります。

管理人 sho
バラの見頃は春と秋の年に2回あります。
バラの見ごろに合わせて春はバラまつり、秋は鎌倉文学館フェスティバルが開催されるよ!
こん吉
鎌倉文学館:バラの花

鎌倉文学館:バラの花

鎌倉文学館:バラの花

鎌倉文学館:バラの花

鎌倉文学館:バラの花

鎌倉文学館:バラの花

バラ園からの帰り道

鎌倉文学館:緩やかな階段

鎌倉文学館:緩やかな階段

バラ園で美しいバラを十分堪能した後は、本館に向かって右側にある緩やかな階段を登って帰り道につきます。庭園の外灯碑には、鎌倉ゆかりの人たちによって詠まれた俳句などが刻まれています。

俳句などの一例

  • まま事の 飯もおさいも 土筆かな 星野立子(高浜虚子の娘)
  • 人丸の のちの歌よみは誰かあらん 征夷大将軍みなもとの実朝  正岡子規(ひとまろ:柿本人麻呂のこと)
  • 大海の 磯もとどろによする波 われてくだけて さけて散るかも 源実朝
  • 鎌倉は 生きて出でにけん 初松男(はつがつお) 松尾芭蕉
外灯碑:星野立子

外灯碑:星野立子

外灯碑:正岡子規

外灯碑:正岡子規

外灯碑:源実朝

外灯碑:源実朝

外灯碑:松尾芭蕉

外灯碑:松尾芭蕉

鎌倉文学館公式サイトに、外灯碑の場所と俳句、そして作者を記載したPDFファイルがあります。

近くの見どころ

鎌倉でも人気の長谷地区にはここ鎌倉文学館以外にたくさんの見どころがあります。詳しくは下記リンク先を参照してください

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鎌倉観光文化検定対策

鎌倉観光文化検定公式サイトに過去問の記載がある第11回(2017年度実施)以降の鎌倉観光文化検定(以下、「鎌倉検定」)2級および3級の出題の中から、鎌倉文学館について、出題状況や傾向を検討します。※問題文は一部改変している場合があります。

2020年度・2021年度の鎌倉検定は中止となっていますのでご留意ください。

傾向と対策

出題傾向としては、2級、3級とも基本的なものになっています。

  • 敷地内にバラ園があり春にはバラまつりが開かれる、鎌倉のバラの名所はどこか。(第11回・3級)⇒正解:鎌倉文学館
  • 鎌倉文学館はもとはある人物の別荘として建てられたが、ある人物とはだれか。(第11回・3級)⇒正解: 前田利為
  • 1936 年(昭和11)に旧加賀藩前田家16代当主前田利為により建築された長谷にある別荘で、1985年(昭和60)から現在のように利用されている建物は何か。(第12回・3級)⇒正解:鎌倉文学館
  • 1985 年(昭和60)に開館した鎌倉文学館の初代館長はだれか。(第11回・2級)⇒永井龍男
  • 鎌倉で三島由紀夫の小説『春の雪』の一舞台になった建物はどこか。(第12回・2級)⇒鎌倉文学館(長谷)

鎌倉文学館のまとめ

  • 鎌倉文学館は、鎌倉市長谷にある鎌倉にゆかりの文学者の作品や資料を展示・紹介
  • 建物はかつて前田家16代当主前田利為が建てたもので、鎌倉に残る貴重な別荘建築の代表的な建物であり、三島由紀夫の小説「春の雪」のモデルともなっている
  • 敷地内にはバラ園があり200種250株ものバラが訪れる人の目を楽しませてくれる

いかがでしたでしょうか。鎌倉文学館の概要についてひととおりまとめましたが、もしも気になるようでしたらお出掛けされてはいかがでしょうか。


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