薬王寺は、鎌倉駅と北鎌倉駅のほぼ中間地点の住宅街にあるお寺。こじんまりとした寺院で観光客がたくさんいるというわけではありませんが、少ないながらも見どころのあるお寺です。
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- 2022年4月29日:記事掲載
この記事の目次
薬王寺とは
薬王寺は、鎌倉駅東口から徒歩およそ13分、北鎌倉駅からなら亀ヶ谷坂を経由して徒歩およそ15分のところにある日蓮宗の寺院です。山号は大乗山(だいじょうざん)、開山は日像(にちぞう)とされています。
もとは梅嶺山夜光寺(ばいれいざんやこうじ)という真言宗の寺院でしたが、1293年(永仁元年)、日像がこの寺に滞在した際に住職と数日にわたり論争し、日蓮宗に改宗しました。
上の写真の薬王寺入り口付近から緩い坂道を上ると、やがて薬王寺の境内に到着します。
薬王寺の境内を歩く
駿河大納言徳川忠長公供養塔
境内に入ると本堂よりも手前の右側に、駿河大納言徳川忠長公供養塔があります。
江戸時代の第三代将軍徳川家光の弟である徳川忠長は、性格が粗暴であったために高崎に幽閉され、のちに自刃の上領地も没収されました。
徳川忠長の妻であった松孝院(織田信長の次男、信雄(のぶかつ)の娘)は、当時の住職に懇願し、ここに忠長の供養塔を建立したとのことです。
その際供養料として土地などを寄進し、境内には諸堂や五重塔などが建てられ、徳川家との縁で徳川家の家紋である三葉葵の地紋が許されました。
薬王寺はその格式の高さから庶民の埋葬は許されなかったといいます。
薬王寺本堂と日蓮上人像
薬王寺の本堂といえば、その前にある2対のシュロの木が目を引きます。徳川家との縁で隆盛を極めた薬王寺ですが、1720年(享保5年)に伽藍は焼失しました。
現在の本堂は1727年(享保12年)に再建され、昭和と平成の時代に改修され今日に至っています。
江戸時代末から明治にかけて無住の時代が続き荒廃したものの、現在は境内からやぐらまでよく整備されています。
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祈珠之塚
本堂手前左側には祈珠之塚があります。この塚は、お守りとして身につけられていた念珠を供養し大自然に返すために建立されたものです。
毒消し薬王菩薩像(さしのべさん)
毒消し(どっけし)薬王菩薩像は江戸時代まで同寺の一角にあり、薬壺を持ち手を差し伸べるその姿からいつしか「さしのべさん」の名で人々に親しまれていましたが、明治期以降は行方不明となっていました。
格式が高いために庶民が参詣することができなかった薬王寺ですが、境内の一角に設けられた薬王菩薩像だけは身分に関係なくお参りできたそうです。
本堂横の階段を上って蒲生家ゆかりの墓へ
動物供養のための一蓮観音像と本堂との間の階段を上ります。階段を上り切ったところに観音堂があります。ここを右に曲がり墓地を歩きます。
左手に歴代上人の墓を見ながら進みます。間もなくひと際立派な宝篋印塔が見えてきます。
この二つの宝篋印塔は、四国の松山城主であった蒲生忠知(がもうただとも)の妻、松壽院と娘の梅嶺院の墓です。
忠知は、織田信長・豊臣秀吉に仕えた武将、蒲生氏郷(がもううじさと)の孫に当たります。妻の松壽院は、磐城平城主の内藤政長の七女ですが名前は不明です。
忠知と妻との間にできた鶴丸は3歳で早世し、忠知亡き後に生まれた娘(梅嶺院)も12歳で亡くなったため、蒲生家は断絶してしまいました。
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ご朱印
今回はご朱印はいただいていません。
鎌倉観光文化検定対策
鎌倉観光文化検定公式サイトに過去問の記載がある第12回(2018年度実施)以降の鎌倉観光文化検定(以下、「鎌倉検定」)2級および3級の出題の中から、薬王寺について、出題状況や傾向を検討します。※問題文は一部改変している場合があります。
2020年度・2021年度の鎌倉検定は中止となっていますのでご留意ください。
傾向と対策
第12回(2018年度実施)以降、薬王寺に関する出題はありません。
薬王寺のまとめ
- 薬王寺は、鎌倉駅と北鎌倉駅のほぼ中間地点の住宅街にある日蓮宗の寺院
- 徳川家光の弟である徳川忠長の供養塔や蒲生忠知の妻と娘の墓がある。
- 徳川家・蒲生家とのゆかりもありかつては庶民の埋葬が禁じられた格式の高い寺院
いかがでしたでしょうか。薬王寺の概要についてひととおりまとめました。もしも気になるようでしたら薬王寺にお出掛けされてはいかがでしょうか。
交通アクセス
JR鎌倉駅東口から徒歩およそ10分
連絡先 | 大乗山薬王寺 鎌倉市扇ガ谷3-5-1 TEL:0467-22-37495 |
公式サイト | 大乗山薬王寺公式サイト |
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参考文献
- 鎌倉観光文化検定公式テキスト
- 鎌倉観光文化検定公式サイト(鎌倉商工会議所)
- 深く歩く 鎌倉史跡散策 神谷道倫著 かまくら春秋社